【茶道】花入れの種類 素材と格で分ける基本とは

茶道において、茶室を演出する花はとても重要な存在です。

そもそも、茶道とは日本人らしい、おもてなしの心が凝縮されている芸道です。お茶の点て方や作法に並び、掛け軸や花の生け方も、客人をもてなすための演出になります。そして、その花をどんな花入れにいれるかは、亭主の力量が問われるところ。

その花入れにはいくつかの種類や飾り方があります。茶道を始めたばかりの人や、これから始めようと考えている人は、花を生ける前に花入れの特性をおさえておくことが大切。

また、茶道を習っているわけではなくても、花入れの知識は普段の花のアレンジに生かせます。

この記事では、花入れの歴史や、素材別の特徴、飾り方、さらに「真」「行」「草」の違いやそれに該当する花入れを紹介しましょう。

茶道を習っている人も、家で花を飾りたい人も、侘び寂びの心を反映した花入れを詳しく知ることで、花を生けることへの興味がぐっと深くなりますよ。

1章 茶道における花の生け方の基本

茶道において、茶室に生けられる花には重要な役割があります。そして、その花を演出するのに欠かせないのが、花を入れる容器である花入れです。

茶室に花を生ける基本とされているのは、千利休の「わび・さび」の精神です。利休の美学の集大成であるわび・さびを明文化した、利休七則にはこうあります。

一、茶は服のよきように点て
二、炭は湯の沸くように置き
三、花は野にあるように生け
四、夏は涼しく冬暖かに
五、刻限は早めに
六、降らずとも雨の用意
七、相客に心せよ

解釈すると以下のようになります。

一、相手の嗜好を考えてお茶をたて
二、段取りは抜かりなく
三、自然な演出を心がけ
四、快適さを提供し
五、ゆとりをもってことを行う
六、準備は万全に整えて
七、みんなが心地よく過ごせるよう、気を配る

七則のうち、利休は三で花に触れています。豪華に趣向を凝らして生けるより、花そのものの良さをそのまま生かしなさい、という意味。

また、花は満開のものではなく、蕾や咲きかけを選ぶことや、少ない本数が好まれることなども説いています。足し算の美学で華やかさを演出する華道に対し、茶道における花の生け方は自然さが特徴なのです。

自然のままの姿を大切にすることで、美しくも繊細な日本の野花に思いを馳せることができるのでしょう。

2章 素材

花入れには種類があり、ここでは素材による分け方を紹介しましょう。素材は大きく分けて3つあります。

1つ目が唐銅、青銅などから作る銅器類。2つ目が土で作る陶器類。3つ目が植物の蔓やひょうたんで作った木工類です。

花入れは飾り方や、器自体の格によって分けられることもあります。ただし、飾り方や格による分類は花や掛け軸との組み合わせによって変動します。そのため、素材での分類が最も明確なんですよ。

2-1、銅器類

唐銅、砂張、青銅、紫金胴など。胴・鉛・錫の合金製です。多くが中国や東南アジア産で、唐物は各上の扱いをされます。

独特の姿形や金肌、模様と花の融合を楽しむのがポイント。

名前は姿にちなんでつけられることが多いです。全体像だけではなく、口や首、耳の形状から名付けられることも。
例)
・口(鍔口、菱口、細口)
・首(鶴の首)
・耳(象耳、管耳、龍耳)

2-2、陶器類

いわゆる焼き物です。
土から作られる焼き物でも、産地や釉薬(ゆうやく)の有無によって格は違います。釉薬とは、陶器の表面を覆っているガラス質の部分をさします。

2-3、木工類

竹花入れ

利休が広めた花入れの一つで、その名のとおり、竹から作られます。
一重切が基本の形で、上部に花窓という、花を挿すための穴が1つ開いているのが特徴。
利休自身が作った竹花入れ「園城寺」も有名ですね。

この花窓を上下二段に切った竹花入れを二重切といいます。こちらも利休の「夜長」が代表作です。

籠花入れ

籠花入れは、大きく唐物籠と和物籠に分けられます。素材は竹や藤の蔓など。

唐物籠は精巧な編み方をされた花入れで、室町時代から存在します。
中でも牡丹籠が代表的です。胴に丸みがあり、口が大きく外に開いて、手(持ち手)が高く作られているのが特徴。

中国ではボタンを入れるための花入れとして使われていました。

一方、和物籠は利休の茶道が完成する頃に登場します。

鉈(なた)を収める鞘を模した鉈籠(なたかご)は、利休が鞘を花入れに見立てたのが始まりとされています。

また、和物籠の1つで、全体的に丸みのある桂籠は、利休が桂川の漁夫が使う道具を譲り受けて花入れにしたのが始まりといわれています。

花を入れるための器を作るというより、すでにあるものを花入れにしたのです。

和物籠では宗全籠もポピュラー。底が四方で大きめの胴を持ち、高い手がついていることから、花を飾りやすい籠という評価をされています。

ただし、籠花入れを使う上で注意したいのが、5月から10月の時期だけ使うのが基本ということ。夏を思わせる涼しげな佇まいですから、11月から4月の時期には合いません。

瓢花入れ

瓢箪の芯をくり抜き、花入れに見立てたもの。
利休が、巡礼者が身につけていた瓢をもらい、上部を切り取り、掛花入れにしたのが始まりとされています。

3章 飾る位置

花入れは飾る位置によっても分類されます。
茶道において花は置いておくだけではなく、壁に掛けたり、吊るしたりもします。

3-1、置き花入れ

床に置く飾り方です。
格によって、真、行、草とランク分けされた置き花入れが存在します。また、この花入れのランクによって、下に敷く板も変わります。

3-2、掛け花入れ

床壁中央や床柱に花釘を打ち込み、そこに花入れを掛けて飾ります。素材は竹や籠でできた花入れが、この飾り方にはよく使われます。

3-3、釣り花入れ

天井に打たれた花蛭釘(はなひるくぎ)に鎖や紐を通し、花入れを飾る方法。
舟や月の形をした花入れを飾るのに最適で、浮遊している様子が楽しめます。

4章 格分け

4-1、格とは

格とは、茶道や華道などで格式を分ける考え方で、真が最も格が高く、以下に行、草と続きます。

書道でも同じく「楷書」「行書」「草書」と格分けされているので、こちらの方がピンとくる方もいるかもしれませんね。

花入れの材質や形状によって格分けされ、花入れを置く薄板にも違いがあります。

4-2、真

最も格式の高い「真」。

中国より花入れが伝わって以降、侘び茶が大成するまでは、唐物を尊重する時代が長く続きました。唐物全盛の時代までに入ってきた唐物は、真と指すことがほとんどです。

例えば、唐銅、青銅、金紫銅、青磁、染付、祥瑞、赤絵、交趾、白磁の置き花入れなど。

畳床には黒新塗の矢筈板を使い、床の真ん中に飾ります。

4-3、行

行の花入れにあたるのは、釉薬で模様やコーティングが施された国内産の焼き物や、砂張、釣り花入れ全般。
焼き物は、瀬戸、織部、萩などが主な産地です。

薄板は真塗以外の塗りの蛤端(はまぐりば)や糸巻を。ただし、肌の粗い花入れの場合は塗りの薄板を避けて、木地の蛤端を使うこともあるようです。

4-4、草

釉薬のかかっていない、素焼きの備前や信楽などの焼き物、さらに竹や籠、瓢など木工の花入れが草に該当します。硝子製など、時代が新しい南蛮物も草に分類されます。

薄板は木地の蛤端、木地の長四方などがあります。ただし、籠花入には用いません。

5章 選び方

5-1、決まりを守りつつも、自由に

まず、本格的に花入れを揃えたいのであれば、真・行・草それぞれ1つずつは用意しましょう。余裕があれば、置き・掛け両方できるような竹や籠の花入れと、釣り花入れも。

どの花入れを使うかは、どの花を飾りたいかという気持ちに直結します。
例えば、背の高い花を飾りたいならば、それに見合う高さのある花入れを選びましょう。

自分が見つけた花を、それにぴったりの花入れで飾って客をもてなせれば、茶人にとって大きな喜びとなります。

また、もてなす場所でも、どの花入れを使うかは違ってきます。
小さな茶室には草の素朴な花入れが合いますし、人数の多いお茶会では存在感のある大きめの花入れを選ぶのも◎。

よほど格式の高いお茶席ではないならば、ある程度は真行草の決まりから外れ、自分の感性を優先し、花と花入れを合わせてもよいでしょう。

特に竹花入れは、竹の色や花入れの形状、飾り方次第で、草でありながら真の雰囲気を出すこともできます。柔軟に楽しみましょう。

5-2、注意すること

ここでは、花入れを飾る際に気をつけたいことを挙げていきます。
時代によって多少変化してきている部分もありますので、ご注意ください。

掛け軸と花を一緒に飾るのは双飾(もろかざり)という略式扱い

縦に長い掛け軸ならば花入れは床柱の釘に掛けます。
逆に横に長い場合は、花入れは床の真ん中へ。
縦に長い軸に対し、花入れが掛けられない場合は、下座寄り3分の1のところに置きます。

花の本数は奇数

掛け軸に花が描かれている場合は、軸の花を1つとして数えてもOK。

完全に開いた花は使わない方がよい

蕾や開きかけを選びましょう。

強い香りの花は避ける

お茶席ではお香もおもてなしのひとつ。その香りの邪魔をするほど香る花は避けましょう。

トゲのある花はトゲをとる

花の種類は、軸や茶碗に描かれた花と被らないように

特定の花をテーマにしたお茶会でないならば、茶道具類に描かれた花と同じ花を飾るのはいけません。

6章 最後に

お茶室における客をもてなすための工夫の奥深さは、茶道の大きな魅力のひとつです。

その中でも花入れと、そこに生けられた花は特別です。一見すると地味にも思えるその姿から、季節の情景を思い浮かべたり、亭主の心配りに気付かされたりと、多くの広がりを見せるのです。

日本の草花の繊細さや、その刹那を楽しむことのできる日本人の感性に触れて、より花や文化に対する理解を深めてくださいね。

提供・はな物語

こちらの記事は、プリザーブドフラワー専門店・はな物語の提供でお送りしました。

花入れに関する情報集めの一助になれば幸いです。

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