椿と山茶花の違い 簡単な見分けポイントとは

花には見た目が似たり寄ったりしているものが数多くありますよね。その中でも特に区別が難しいのが椿と山茶花。色も形もとてもよく似ていて、ほとんど同じようにも見えます。

でもこの2つは全く別の花。花自体はとても似ているので、花を見比べても区別するのは難しいかもしれません。

ではどこを見比べればいいのでしょうか?

この記事では椿と山茶花を区別するポイントを紹介します。椿と山茶花を見分けるためには、花そのものの色や形より、開花時期や葉、香りなどがヒントとなるんですよ。

意外と区別するポイントは多いので、ポイントを抑えてしまえば見分けは簡単です。

ぜひ、椿と山茶花の見分けにチャレンジしてみてくださいね。

1章 椿と山茶花はよく似た別の花

どちらも同じツバキ科ツバキ属の植物で、花や葉の形もよく似ています。

でも、この2つは全く別の花なんですよ。学名も椿は「Camellia japonica」、山茶花は「Camellia sasanqua」で別のものとして区別されています。

また、咲く時期、葉、散り方などを見ても、この2つの花は異なります。

2章 見分けポイント

具体的な見分けのポイントを見てみましょう。

2-1、開花時期

椿と山茶花の見分け方として分かりやすいのは開花時期です。

椿は12~4月に開花します。ちょうど真冬の季節に咲き始め、春まで楽しめます。

一方、山茶花の開花時期は10~2月。秋から真冬にかけて咲き、椿よりも楽しめる期間は短め。

晩秋の情景を歌った童謡「たきび」にも山茶花が出てきますよね。秋から冬への変わり目に咲き始めるのが山茶花なのです。

2-2、葉

葉の形はよく似ています。

でも、決定的に違う点がいくつかあるんですよ。

1つは大きさ。椿の葉は5~12cmあります。対して、山茶花の葉は長さが3~7cmあります。つまり、山茶花の方が一回り小ぶりです。

また、椿の葉はワックスがかかったように艶々としています。

一方、山茶花の葉は縁のザギザが目立ち、葉の付け根あたりには細かい毛が密集しています。表面に艶はありません。

太陽にかざしてみると、椿の葉脈は黒く、山茶花の葉脈は白く見えます。この葉脈の色の違いも分かりやすい見分け方ポイント。

椿と山茶花は、花よりも葉の方が見分けやすいのですね。

2-3、散り方

この2つの花は散り方も大きく異なるんですよ。

椿は花の頭ごとボトッと落ちます。その様は縁起が悪いとされ、江戸時代には武士たちに敬遠されたといわれています。

片や山茶花は花びらが1枚1枚パラパラと散ります。

2-4、香り

椿の香りって、どんな香りか思い出せますか?

すぐにイメージできる人はいないでしょう。というのも、もともと椿に香りはほとんどありません。椿の鮮やかな赤に誘われて鳥や虫がくるため、香りを発する必要がなかったのではないかと言われています。

ただし、園芸種で「香り椿」という種類があります。これは沖縄などに自生する香り高いヒメサザンカというツバキ科の植物と様々な園芸種との交雑でできたもの。

一方、山茶花は香り豊かな花として知られています。雄しべに顔を近づけると、その香りはやや強烈。

香りは花の色にもよって違い、白はやさしい香りがします。ピンクは白よりも濃厚で、ジャスミンのような芳醇な香りがします。

2-5、実

椿の実はツルツルしていますが、山茶花の実は毛があります。

2-6、子房に毛があるか

椿の子房には毛がありません。山茶花の子房には毛があります。

3章 椿の品種、由来、歴史

この章では椿について紹介しましょう。

3-1、品種と由来

品種

椿は日本原産のツバキ科ツバキ属の常緑樹(学名Camellia japonica カメリア・ジャポニカ)で、照葉樹林の代表的な樹木です。野生種の標準和名はヤブツバキといいます。

椿は常緑性の高木で、通常は高さ5~6mほどになります。ただし、高いものだと高さ18m、幹は直径50cmにもなるものもあるとか。椿は成長は遅いですが寿命は長いことも特徴。

京都府指定天然記念物の「滝の千年椿」のように樹齢1200年という長い年月を生きてきた椿もあります。

日本国内では本州、四国、九州、南西諸島で多く見られます。国外では朝鮮半島南部や台湾など比較的温かい所に咲くようです。

ただ、ユキツバキという種類は標高の高いところで育つため、青森県の標高の高い場所でも見られます。

ヤブツバキ以外にもツバキ属の植物を広く椿と呼びます。国内外でヤブツバキやユキツバキから作られた品種や中国・ベトナム産の原種、園芸品種などが椿に該当します。

椿は品種がとても多い花でもあります。色は白やピンク、赤、黄色などがあります。また、花の咲き方も、一重咲き、八重咲き、唐子咲き、牡丹咲き、獅子咲き、千重咲きなど様々な咲き方があるんですよ。

品種は日本だけでも1,000種類、世界には6,000種類が存在するというのですから驚きですね。日本では日本原産の原種ヤブツバキを改良した品種が特に多く親しまれています。

見分けが難しい品種もある

品種改良が繰り返されたことにより、山茶花との見分けがかなり難しい椿もあります。

例えば、椿と山茶花の交配種である「寒椿」などは見分けが難しいかもしれません。見分けポイントの1つである散り方で、椿は花の頭ごと落ちると紹介しました。

でも、この寒椿は花びらが1枚ずつ散るんですよ。つまり、山茶花の散り方なのです。

開花時期も山茶花とほとんど同じ。椿と山茶花の両方の特徴を持っているのです。

由来

椿の名前の由来は、葉の艶や生命力からきているそうです。葉の丈夫さから「強葉木(ツヨバキ)」、葉にツヤがあることから「艶葉木(ツヤハキ)」、葉が厚いことから「厚葉木(アツバキ)」などと呼ばれていたものが転じて「椿」という和名がついたと言われています。

また椿の花言葉は「理想の愛」「謙遜」「控えめな美点」など。

そして、赤い椿は「控えめな愛」「気取らない美しさ」という花言葉があり、白い椿には「申し分のない愛らしさ」「理想的な愛情」「冷ややかな美しさ」 といった花言葉もあります。大和撫子を例えるような花言葉ですよね。

3-2、歴史

椿は日本古来の特産物の一つ。「古事記」や「日本書記」、「出雲風土記(733年)」などの多くの古文献にその名が出てきます。

平安時代初期には食用や化粧品や長寿の薬として既に用いられていたとか。古代から日本人に親しまれてきた植物なのです。

現在でも京都の龍安寺などには、室町時代から咲いている椿が残っています。古来より人々により大切に維持管理されてきた証でしょう。

また、遣唐使が唐への贈り物として椿油を持って行ったことからも、椿は珍重されていたことがわかります。

江戸中期には長崎からオランダを経てヨーロッパにも椿油が伝わり人気を得ました。国内では、現代に至るまで女性の艶やかな黒髪を保つために椿油が愛されてきました。

4章 山茶花の品種と歴史

この章では山茶花について紹介しましょう。

4-1、品種

山茶花(山茶花、学名Camellia sasanqua カメリア・サザンカ)は、日本が原産の一つのツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹です。

日本では本州の山口県や沖縄の山林などに自生します。国外では台湾、中国、インドネシアなどに分布しています。

山茶花はツバキ科の常緑小高木です。「山茶花」の表記は中国語でツバキ類一般を指す「山茶」に由来します。本来の読みである「サンサカ」が訛って「サザンカ」と呼ばれるようになったとか。

山茶花は、園芸品種が豊富で300種類以上もあります。膨大な数の品種があるわけですが、それらは以下の3種に大別することができます。

サザンカ群

野生の山茶花(ヤブサザンカ)から作出された園芸品種です。10月頃に花を咲かせます。花びらは一重や二重などで樹形は自生種に似ています。

カンツバキ群

山茶花の園芸品種である「カンツバキ(獅子頭)」から作出された品種群です。花びらの数が多く八重咲きや獅子咲きなどとても華やかです。11月中頃から2月まで花を咲かせます。

ハルサザンカ群

2月中旬から5月中旬頃の温かい時期に咲きます。山茶花と椿の交雑品種群で一重咲きや八重咲きなどがあり、花の大きさも多様です。

4-2、歴史

「山茶花」という表記で山茶花が日本の文献に最初に現れるのは、室町時代の『尺素往来』(セキソオウライ)です。

それまで山茶花は椿と明確に区別されていなかったようで、植栽の歴史もよくわかっていません。

江戸中期頃になると栽培が盛んになります。伊藤三之丞が著した『花壇地錦抄』(カダンチキンショウ)には、36品種が解説されています。

『大和本草』には「茶梅は山茶の類にて葉も花も小なり。白あり。香よし」と記されています。

この頃から盛んに品種改良が行われ、11代将軍の家斉(1786~1837 年)は、山茶花をこよなく愛していたそうです。山茶花は元禄3年に長崎に来航したドイツ人医師ケンペルによって初めて海外に紹介されました。

5章 最後に

椿と山茶花はとても似ていますが、見分けるポイントも多い花です。

品種改良により、開花時期や散り方が似ているものもあるのは確か。その中でも、実に毛があるかどうかは大きな見分けポイントです。

椿と山茶花は古くから人々に親しまれ、真冬に咲く数少ない花です。軒先や公園の花壇で見かけることも多いです。

見分けるのが多少難しい方が、観察するのがより楽しくなるかもしれませんね。

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