牡丹と芍薬 似て非なる花の違いは葉と散り方にあり

花の中には似たり寄ったりで、違いがよくわからないもの花がありますよね。その中でも特に判別が難しいと思われているのが、牡丹と芍薬ではないでしょうか。

華やかな大輪の花を咲かせる牡丹と芍薬。一見するとかなり似ています。同じボタン科・ボタン属の花なので、同じ花だと思っている人もいるのでは?

しかも、この2つの花の英語名は「peony」。つまり英語圏の国では区別がなされていないのです。

でも、この2つの花は全く別の植物なんですよ。原産地も、開花の時期も異なります。

この記事では、牡丹と芍薬を見分けるポイントを紹介しましょう。ポイントさえわかると、とても簡単に見分けることができます。

ぜひ参考にしてみてくださいね。

 1章 似ているけど違う芍薬と牡丹

そもそも芍薬と牡丹は別の花なの?と思う人いるでしょう。

確かに両方ともボタン科ボタン属で、かなり似ています。でも全く別の花なんですよ。

牡丹と芍薬には違う点がたくさんあります。

よく見ると、花の大きさも違うんですよ。大きくどっしりとした貫禄あるがある方が牡丹。それに比べて芍薬はやや小振りです。

2章 見分けポイント

牡丹と芍薬の見分けポイントを見てみましょう。

2-1、葉

牡丹と芍薬の違いが最もよくわかるのが葉の形です。牡丹は葉にツヤがなく、大きく広がっています。また、先が3つに分かれてギザギザになっているのも特徴。

一方、芍薬の葉はツヤがあり、葉の先にギザギザはなし。全体的に丸みもあります。

2-2、つぼみ

牡丹の蕾は先端が尖っているのに対し、芍薬の蕾は球形をしています。

2-3、散り方・枯れ方

散り方にも大きな違いがあります。

まず、牡丹は散るときに花びらが1枚ずつ散ります。ただし、数日間かけて徐々に、ではありません。一気にパラパラと落ちるのが特徴。

そして、葉は落ちますが茎は枯れずに残ります。

一方、芍薬は花びらが散るのではなく、花の頭ごと落ちます。葉も茎も枯れ、根と芽の部分が残るのみ。

どちらの花も、その散り方は「崩れる」と表現されます。散り方の様はやや違いますが、あっという間に散って花の形を失うため、そのような表現になったのでしょう。

2-4、開花時期

一般的に牡丹は晩春に咲きます。

一方の芍薬は初夏に開花します。そのため、開花の時期でも見分けることが可能。ただし、気候によっては同時期に咲く場合もあります。

2-5、香り

もっと簡単に見分けるポイントとして、香りもあります。芍薬はバラのような甘く爽やかな香りを発します。フランスでは、爽やかな香りのワインを「芍薬の香り」と表現するとか。

「どっちかな?」とわからないときは、香りを確かめてみるのもいいですね。

2-6、木か草か

牡丹は木本性(樹木)で芍薬は草本性(草)です。

「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」という美人を形容する言葉がありますよね。

実はこの言葉、芍薬と牡丹の生え方を例にした褒め文句なんですよ。

芍薬は枝分かれせずまっすぐ伸びるのでスラリとした立ち姿の華麗な美人に、牡丹は枝分かれして低く横に広がっていくので、落ち着きのある清楚な美人に例えているのです。この言葉からも、牡丹と芍薬の姿の違いが伝わってきます。

3章 牡丹の特徴と歴史

この章では牡丹の特徴と歴史を紹介しましょう。芍薬との違いがよりはっきりとわかります。

3-1、特徴

牡丹はボタン属の中の「Paeonia suffruticosa (パエオニア・スッフルティコサ)」と呼ばれる特定の種を指します。中国が原産で、中国の国花でもあります。

ただし、どのようなルーツで生まれたのかわかっておらず、謎の多い花なんですよ。原種はおよそ5種類程度と考えられています。

牡丹には別名が数多くあり、「富貴草」「花王」「百花の王」「名取草」「二十日草」などとも呼ばれています。

また、芍薬に似た樹木ということからでしょうか、牡丹の別に「木芍薬」という名前もあります。

3-2、歴史

中国では2世紀にはすでに薬用として使われ、5世紀頃の南北朝時代に観賞用として扱われるようになりました。唐の時代になると牡丹ブームが到来。広く栽培されるようになり、牡丹園が多く造られるなどしました。

それ以降、中国で牡丹は花の王としての地位を確立していきます。

日本には奈良時代に伝わったとされ、一説には弘法大師が持ち帰ったとも言われています。

「枕草子」「蜻蛉日記」などに牡丹の絵が描かれていることから、平安時代には既に観賞用として用いられていたと考えられています。

鎌倉時代になると、寺や庭園に植栽されるようになりました。本格的に栽培や品種改良がされたのは江戸時代からです。

明治時代には大阪の池田で栽培が盛んに行われ、さらに発展しました。新潟や島根でも牡丹栽培の歴史は古く、優れた品種をいくつも生み出しています。現在では島根県の大根島が一大生産地として有名です。

高貴な花として大切にされてきた牡丹は文学や芸術の世界でも愛されてきました。中国文学では詩歌に盛んに詠われ、日本文学でも多くの俳句で季語として詠まれています。

また、豪華な花の姿は絵画でも長く使われているモチーフの1つです。

4章 芍薬の特徴と歴史

芍薬は原産地や用途の点で、牡丹とは異なります。

4-1、特徴

原産地はチベット、シベリアから朝鮮半島の一部にかけてです。

高貴な花としてその地位を守り続けてきた牡丹とは違い、芍薬は多くの人々に愛されてきた庶民の花といえます。牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相、「花相」と呼ばれます。

芍薬の花の名前の由来は、しなやかで優しい姿を意味する「綽約(しゃくやく)」であるとも言われています。また、美しい花の姿から、フランスでは「聖母のバラ」、スペイン・イタリアでは「山のバラ」と呼ばれているのだそう。

また、芍薬は古代から薬草として重宝されてきました。芍薬はの学名「Paeonia lactiflora」で、「Paeonia(ペオニア)」とはギリシャ神話の医の神「Paeon」(ペオン)を由来としています。

医の神ペオンはオリンポス山から採ってきたシャクヤクの根で、ケガをした死者の国の王であるプルートーの傷を治したのだそうです。

芍薬は死者の国の王の傷をも治す薬として尊ばれました。

実際の芍薬の根には消炎、鎮痛、抗菌、止血、抗けいれん作用があるとされています。

漢方ではお馴染みの生薬で、風邪の時などに飲む葛根湯や、婦人病などに用いられる当帰芍薬散などの漢方方剤に配合されています。パッケージや説明書の原料の欄に「シャクヤク」の文字を見たことのある人も多いと思います。

あの華麗な花の根にこれほどの薬効があるとは驚きですね。

4-2、歴史

中国では古くから大量に栽培され、切花として売られていたそうです。宋代になると本格的な育種が始まりました。

日本には平安時代以前に、薬草として伝わりました。

その後、室町時代には鑑賞用の花として人気になります。江戸時代には肥後熊本藩の細川重賢が、菊、朝顔、椿、山茶花、花菖蒲とともに芍薬の栽培と育種を奨励しました。

この6つの花は「肥後六花」と呼ばれ、熊本で品種改良された芍薬の系統を「肥後芍薬」と呼びます。

18世紀にはヨーロッパにも伝わり、イギリスやフランスで品種改良が盛んに行われます。ヨーロッパで生まれた品種と日本の品種の交配も行われ、色や咲き方の種類が豊富になっていきました。

花色はピンク、赤、紫、オレンジなどがあり、斑点や縞模様が入っているものもあります。咲き方も一重や八重の他、バラ咲きや翁咲きなどがあります。

5章 最後に

一見するとかなり似ている芍薬と牡丹ですが、見分けるポイントは明快です。少なくとも、葉の形と散り方の違いを覚えておけば、間違えることもなさそうです。

公園や街中の花壇でふと見かけたとき、少し立ち止まって芍薬か牡丹か見分けてみるのも楽しいですよ。

提供・はな物語

こちらの記事は、プリザーブドフラワー専門店・はな物語の提供でお送りしました。

芍薬と牡丹の違いを調べる一助になれば幸いです。

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