春の訪れを知らせる花 桜の名前の謎深き由来とは?

毎年、桜の開花予想がニュースで流され始めると、なんだかわくわくしますよね。春を象徴する花といえば、桜をまず思い浮かべる人は多いでしょう。
「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」
その昔、平安時代の歌人、在原業平はこのような歌を詠んでいます。現代語訳すれば「桜という花がなければ、春をのどかな気持ちで過ごせるのに」といったところでしょう。
桜には人の心を揺さぶるほどの魅力がある、と桜を讃える意味が込められています。
そんな人々を魅了してきた桜ですが、その名前の由来を知っていますか?
実は、なぜ「サクラ」という名前が付けられたのか、はっきりとわかっていません。由来の説は複数あります。
この記事では、桜の名前の由来と考えられている説を紹介しましょう。
神話や日本語の変化が関係している、とされています。長い年月を経て、徐々にその名前がつくられていったとしたら、とても歴史を感じる花ですね。
その由来を知ると、ますます桜を見て感慨にふけるはずです。
目次
1章 桜の名前の語源
桜の名前の語源については諸説ありますが、7つ の代表的な説があります。
説1
動詞の「咲く」に接尾語の「ら」がつき「さくら」という名詞となったという説です。
また、「ら」は花達という意味もあり「咲く花ら」と春に咲く花全般を表したともいわれています。
説2
昔から山の神様が春になると桜に宿り、里に下りてきて田植えが終わるまで滞在していたといわれています。
山の神様が里に下りることを「さおり」といい、田植えが終わって神様が山に帰ることを「さのぼり」といいます。
「さ」は「サの神様」、「くら」は神のおやすみされる御座(みくら)のことで、このふたつの言葉を合わせて「さくら」になったという説があります。
この「サの神様」とは、天照大神よりも前に信仰されていた神様です。
説3
古事記や日本書紀にも登場し、さくらの霊ともいわれる、木花開耶姫(このはなさくやひめ)を由来とする説 です。
この姫が霞に乗って、富士の山の上空から桜の種をまいたといわれています。
説4
咲麗(さきうら)という言葉の略称という説。咲麗とは、花が華麗に咲く様を表した言葉です。
説5
割開(さけひらく)という言葉の略称という説。割開とは、桜の樹皮が横や縦に裂ける様子を表した言葉です。
説6
サキクモルの意味が転化したという説。桜が咲く時期は、移動性高気圧の晴天と、悪天候の低気圧の間隔が短く、雲りがちな日が多い季節です。この独特な天候を「花曇り」といいます。
その天候をサキクモルと表現し、それが桜そのものの名前に変化していったというのです。
説7
サは穀霊、クラは神座をさし、サクラとは穀霊が鎮座する場所という意味に由来するという説。
桜には農作物の神様である穀霊が宿っていると考えられ、田植えや収穫の時期を桜の開花の様子で決めていました。
神聖な穀霊が宿る樹木だったため、その神様に由来する名前がつけられたというのです。
2章 代表的な桜の名前の由来
この章では、代表的な桜の名前の由来を紹介しましょう。
ソメイヨシノ(染井吉野)
染井村の植木職人が育てて広めたことから、染井の名がついたと言われます。染井村とは、現在の東京都豊島区駒込にあった村です。
もとは「ヨシノザクラ」という名前でした。しかし吉野のヤマザクラと混同しやすいため、1872年に現在の名前に変更された経緯があります。名付け親は、江戸末期から大正に活躍した博物学者の藤野寄命(ふじの よりなが)。
ソメイヨシノは、江戸時代から明治時代にかけて全国各地に植栽され、観賞用の桜の代表です。
花弁は5弁で花が咲いてから葉が出ます。花づきは桜の品種の中でも絢爛ですが、樹木の寿命は短いのが特徴。
開花時期は3月下旬ごろからです。
花言葉は「純潔」「優れた美人」。
カワヅザクラ(河津桜)
静岡県の河津町に咲く桜ということで、文字通り地名からこの名前が付けられました。
カワズザクラは、1月下旬から2月にかけて開花する早咲きの桜で、ソメイヨシノより花の色が濃いのが特徴です。
この桜は、早咲きのオオシマザクラとヒガンザクラの自然交配から生まれたと言われています。
花言葉は「精神美」「純潔」。
シダレザクラ(枝垂桜)
枝がしだれて咲くことから、この名まえがついたといわれています。樹齢が長い品種でもあり、大きいものは高さが20mに及ぶ樹木もあります。
地域によっては、クサジザクラ、シダレヒガン、シダリザクラ、イトザクラとも呼ばれています。
シダレザクラの中でも、ヤマベニシダレやベニシダレが有名です。
開花時期は、ソメイヨシノと同じ時期の3月下旬ごろからです。
花言葉は「優美」「ごまかし」。
ヤマザクラ(山桜)
山桜はその名の通り山に咲く日本の野生桜で、名前も山に生息することからきています。
奈良県の吉野山は日本の山桜の発祥の地と言われ、平安時代から手入れをしながら守られてきました。
今でこそ桜の中で知名度が高いのはソメイヨシノですよね。でも、昔は桜といえばヤマザクラのこと。その優雅な姿に人々は強く惹きつけられていたようです。
吉野山の桜の多くは白山桜(シロヤマザクラ)で、山全体で約3万本といわれています。
下千本、中千本、上千本、奥千本と下から順番に上へ上へと咲いていきます。
また、ヤマザクラは地域によって名前が異なります。
- 青森県… カバザクラ
- 新潟県… オクチョウジザクラ
- 岡山県… サイフリボク
- 鹿児島県… リュウキュウクロウメモドキ
たくさんの名前を持っている桜なんですね。
開花時期は3月下旬から4月いっぱいです。
花言葉は「純潔」「高尚」。
ヤエザクラ(八重桜)
花が八重につくことから、ヤエザクラと呼ばれています。
また、野生の山桜と違い人里に咲くことから、サトザクラとも言います。
八重桜は品種が豊富で、中にはまれに一重咲きのものもあります。色も白から濃い赤などがあるんですよ。種類はカンザン、フゲンソウ、ヤエベニシタなどがあり、ソメイヨシノより2週間近く遅れて見ごろとなります。
桜の中でも香りが強めなため、その香りは和菓子作りにも取り入れられています。
花言葉は「しとやか」「豊かな教養」。
3章 日本三大桜の由来
日本には「日本三大桜」と呼ばれる桜があります。どれも樹齢が1000年以上とされ、何世紀にもわたって人々の心を魅了してきました。
また、桜の様子や伝説がその名前の由来となっています。
根尾谷淡墨桜(ネオダニウスズミザクラ)
淡墨桜はつぼみの時は薄いピンク色で、満開になると白くなり、散るときは薄く墨をかけたように変化することから、この名前がついたという説があります。
エドヒガンザクラで樹齢1500年以上といわれています。
見ごろは4月上旬~中旬です。
山高神代桜(ヤマタカジンダイザクラ)
ヤマトタケルが東方遠征の時に立ち寄り植えたことから、この名前がついたといわれています。
実相寺の境内にあるエドヒガンザクラで、樹高、幹周りともに10m以上あり、樹齢は2000年以上と言われており天然記念物に指定されています。
見ごろは4月上旬です。
美春滝桜(ミハルタキザクラ)
滝桜という名前の由来は、枝についた花が流れ落ちる滝のように見えることから名付けられたといわれます。
ベニシダレザクラで、四方に伸びた枝は東西25m、南北20mに広がっています。
樹齢は1000年以上で、天然記念物に指定されています。
見ごろは4月中旬から下旬です。
4章 桜は日本古来の花なの?
古くから日本にある桜ですが、そもそも日本古来の花木なのでしょうか?
桜自体は北半球の温帯と湿帯に幅広く生息しています。学術的に、原産地としてはヒマラヤ近郊が有力とされています。
日本の古代の化石からムカシヤエザクラの葉が出土しているので、日本にも古くからあった花木には違いありません。また、日本の桜の原点は自生の山桜とも言われています
ただし、どこからどのように伝わったのかは定かではありません。
5章 最後に
桜の由来についてまとめました。参考になりましたか?
桜はもともと穀物の神様が宿る花木とされ、神聖な存在でした。その名前の語源にも、やはり神様が関連しているようです。
現在でも春の訪れを象徴する花として、多くの人々がその開花を待ち望んでいます。
また桜吹雪と呼ばれるように、その散っていく様ははかなくも見事です。
桜の由来を知って、より感慨深いお花見にしてくださいね。
提供・はな物語
こちらの記事は、プリザーブドフラワー専門店・はな物語の提供でお送りしました。
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桜の由来に関する情報集めの一助になれば幸いです。
季節を問わず、花を愛でると心が安らぎますよね。
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