皮手袋の臭い消しでもあった?ラベンダーと人の奥深い歴史を紹介

石鹸、入浴剤、コスメなどに多く使われる身近な香りといえば、ラベンダーですよね。ハーブであるラベンダーは癖がなく、男女問わず好まれる香りでしょう。

香りだけではなく、紫色の愛らしい花を部屋に吊るしてインテリアにしている人もいます。
また、ハーブティーにして飲んだり、ケーキに入れて香りづけをするなど、食される植物でもあります。こんなに広く人々の生活に溶け込んでいる植物もそう多くはないですよね。

そんなラベンダーは、古代から人々にとって身近な植物でした。1世紀に書かれた薬学書に、すでにその効能が記述されています。日本に伝えられた時も、当初は薬草として紹介されていました。

一方、薬や芳香剤として活用されてきたラベンダーは、時代の需要に応じて用途や栽培が左右されてきた歴史をもっています。

この記事では、ラベンダーが人によって活用されてき歴史を中心にまとめました。薬、防虫剤、臭い消し、お菓子、香水、精油などラベンダーの興味深い活用の遍歴を紹介しましょう。

ラベンダーと人の歴史を知れば、もっとラベンダーを身近に感じられるかもしれませんね。

1章 ラベンダーとは

ラベンダーの基礎情報をご紹介します。

1-1、語源

ラベンダー(lavender)は、ラテン語の「lavara 洗う」が語源です。

すでにローマ時代から入浴時に利用されていました。殺菌・消毒効果があるとされ、傷口を洗うためにも使用されていたのだとか。その為「洗う」が語源となっているのですね。

1-2、特徴

ラベンダーは、シソ科 ラバンデュラ属に分類されます。低木のような草本で、高さは1~2m 以下が主流です。日本におけるラベンダー栽培の代表地域といえば、北海道を思い浮かべる人も多いはず。なぜその地域が適しているのか知っていますか?

ラベンダーは強い耐寒性があるため、寒い場所でも繁殖します。一方、湿気には非常に弱いのも特徴。北海道は梅雨前線の影響をあまり受けないため、梅雨の時期があまりありません。そのため、1年を通して湿気が少ないのです。

また、ラベンダーの花は紫色の小粒タイプが一般的です。でも実は、紫以外にも白やピンクの花を咲かせる品種もあります。例えば、ピンクパフュームラベンダーは淡いピンク色をしています。

形状も小粒だけではありません。一見、桜のような形状をした花を咲かせるエレガンスアイスラベンダーなどの品種もあります。

また、シルバーフリンジラベンダーという品種は、つくしのような姿をしています。品種によって花の形がかなり異なるのが、ラベンダーの特徴といえます。

ラベンダーは、精油を抽出できる草花でもあります。ラベンダーには精油を出す腺があり、その芳香で蜂などを引き寄せます。夏の暑さで自然発火し、野火をよぶことも。種子は野火の後に発芽する性質を持ちます。

1-3、種類

ラベンダーには約20種類もあるとか。ただし、自然交配や品種改良が幾度と繰り返されてきたため、ラベンダーを分類することは難しいとされています。

同じラベンダーに複数の名前がついているケースもあるんですよ。
主なグループを挙げてみましょう。

ラヴァンドゥラ・グループ(スパイカスラベンダー)

観賞用、精油などに利用される、メジャーなラベンダーです。

・イングリッシュ・ラベンダー
一般的に、ラベンダーとはこの種をさしています。コモンラベンダー、真正ラベンダーとも呼ばれています。

・スパイクラベンダー
葉が灰緑色で幅が広いため、ヒロハラベンダーとも呼ばれています。地中海沿岸やポルトガルに生息します。

・ウーリーラベンダー
花が濃い紫で、全体的に綿毛でおおわれています。スペイン南部などに生息しています。

・ラバンディン
イングリッシュ・ラベンダーとスパイクラベンダーを交配させた品種。香りが強く、精油の量も多いのが特徴です。

・イングリッシュ×ウーリー
イングリッシュ・ラベンダーとウーリーラベンダーを交配させた品種。

ストエカス・グループ

カナリア諸島、アフリカ北部、スペイン~トルコ、中東などに分布。

・フレンチ・ラベンダー
耐寒性と耐暑性に優れ、育てやすい品種。紫、白、赤紫など花の色にバリエーションがある。

・ウィリデス
黄緑色のラベンダー。花の形はフレンチ・ラベンダーに似ている。

・フレンチ亜種交配(マーシュウッド、アボンビューなど)
フレンチ・ラベンダーを元に配合して作られた品種。

デンタータ・グループ

カナリア諸島、アフリカ北部、スペインに分布。

・デンタータ
花と葉の両方をハーブとして利用できる、人気の高いラベンダー。1mほどに成長する。

・カンディガンス
デンタータと同じく、大きく育つ品種。耐寒性にやや弱い。

プテロストエカス・グループ

・ピナータ
一般的なラベンダーとはかなり形が違う品種。耐寒性も耐暑性も低いため、育てるのがやや難しい。

・ムルティフィダ
全体的に産毛に覆われている。強い香を持っているが、一般的なラベンダーの香りとは異なる。

2章 古代ヨーロッパ ~高額で取引されていた~

ラベンダーは、人類が文字を発明するはるか昔から使用されていました。その歴史をみていきましょう。

ラベンダーはいつどこで最初の花を咲かせたのか。実は、現在になった今でも謎のままです。

ラベンダーが歴史上の文献に初めて現れたのは、ギリシャ出身のローマの医師ペダニオス・ディオスクリデスが書いた『薬物学』でした。この本は西暦1世紀に出版された書物です。

この本の中で、スパイクラベンダー又は、ストエカスラベンダーについて「貴重な植物」と記しています。また、蒸留器にかけて蒸留して作ったラベンダー油の優れた香りについての記載も見逃せません。

古代ローマでは、かなりの高額で取引されていました。既に古代ローマの時代から、ラベンダーの優れた香りと効果を人々が求めていたことがうかがい知れます。

また、他の古い文献では、ローマ人が入浴の芳香剤として、また肌着類の保存剤としてラベンダーを用いていたことも記録されています。

片や、古代アラブの女性は、髪のツヤを出す為にラベンダー油を使用していたのだとか。古代エジプトでは、ミイラ作りにラベンダー油が使用されたといわれています。
世界各国で、ラベンダーが様々な用途に用いられたのですね。

3章 中世ヨーロッパ ~精油人気の高まり~

中世ヨーロッパ(歴史区分では500~1500年の間)は、積極的なラベンダーと精油の使用が始まった時代です。

精油の人気が高まった理由の1つに、異文化交易による高度な蒸留技術の伝来があります。

その象徴的な出来事に、「十字軍」があります。エルサレム奪還の為に、西ヨーロッパのキリスト教の国々が、兵士を異国に送りました。当時、イスラームの国は錬金術に長け、すでに9世紀には高度な「アランビク」と呼ばれる水蒸気蒸留を確立していたのです。

こうしてラベンダーと、イスラームから持ち込まれた蒸留技術が合わさり、14世紀頃には、ヨーロッパでも高度な蒸留技術が確立したといわれています。

また、精油に限らずラベンダーは生活の中で広く使われるようになっていきました。

  • 虫よけとして、ベランダに吊るす
  • 床にまいて芳香剤や防虫剤の代りに使う
  • 殺菌力があり、薬として使われる

ペストが流行した時、ラベンダー畑で働いていた人は感染を免れたという逸話があるほど強い抗菌力を持ちます。

4章 近世ヨーロッパ ~需要の高まり~

近世のヨーロッパでは、ラベンダーは上流階級の食通の間で人気の食材となっていきます。そして、香水としても大変な需要がうまれます。

4-1、食としてのラベンダー

イングランドとアイルランドの女王、エリザベス一世(1533~1603年)は、ラベンダーのジャムを好んで食べたといわれています。ラベンダーの砂糖漬けを肉料理やフルーツ・サラダの薬味として、時には、頭痛薬として服用していました。

またイングランドの王チャールズ1世の妃、ヘンリエッタ・マリア(1609~1669年)も、ラベンダーを愛した1人。ラベンダーの花を刻んで、砂糖漬けにしたものをビスケットに塗って食していたとされています。

4-2、臭い消しとしての香水

18世紀、フランス・パリの上流階級の人々の服装は豪華絢爛になっていきました。そのような中、婦人たちの間で流行ったのがなめし皮の手袋。当時は大変な人気だったといいます。

ただし、婦人たちを悩ませる問題がありました。それは手袋が放つ「動物臭」です。
その臭さといったら、手袋を取ったあともずっと残る位だったのだとか。

なめし皮の手袋を生産していたのは、南フランスのオートプロヴァンス県にあるグラースとうい町でした。その手袋の臭さに苦情が殺到したといわれています。

この問題を解決したのが香水です。グラースの手袋職人たちは、香水で動物臭を消すことを考えたのです。この案により、手袋の売り上げはさらに伸びました。

グラースが香水に目を付けたのには、地理的な理由が挙げられます。グラース周辺には、ラベンダー・ジャスミン・ローズマリーなどのハーブが沢山の花を咲かせていました。これらのハーブを用いて精油、香水を作り出したのです。

ただし、始めは売れ行きの良かった革の手袋は、時が経つにつれて流行も下火になってきました。手袋に税金がかけられ、他の地域でも生産されるようになったことが原因といわれています。

19世紀頃になると、グラースの町は手袋の生産をやめます。一方、香水産業だけは生き残りました。

現在でも「香水の中心地」といわれるグラース。マリリン・モンローが愛用し、今でも世の女性の憧れであるシャネル「5番」の香水も、この場所で作られたのです。

5章 現代ヨーロッパ ~ラベンダー栽培の衰退と回復~

古くから人々に愛されてきたラベンダーは、その栽培に陰りが出てきます。

5-1、野生ラベンダーの激減

19世紀の終わり頃になると、香水産業が本格化し、ラベンダー精油という香料の需要が高まりました。産業の発達に伴い、大規模かつ安定したラベンダーの収穫が必須となってきます。野生の真正ラベンダーでは、需要に追い付けなくなっていったのです。

ここで登場するのが「ラバンジン」というラベンダー。真正ラベンダーとスパイクラベンダーを自然交配させたラベンダーです。

「ラバンジン」の特徴は、栽培しやすく、精油を効率的に摂れる点にあります。生産コストが低く、真正ラベンダーの100倍もの効率の良さで精油を産出する事ができたのです。

1924年以降、ラバンジンのラベンダー畑が主となり、真正ラベンダーの生産規模はどんどん小さくなっていきました。こうして上流階級のみだけでなく、一般庶民のラベンダー需要にも応えられる生産体制が整えられていきました。

5-2、ラベンダー生産の隆盛

20世紀に入ると、ラベンダーの生産に陰りが出てきました。ラベンダーの香りを人工的に作り出した合成香料が開発されたのです。

これにより、ラベンダーの価格は急落。ラベンダー栽培によって収益を上げていた土地から多くの若者が離れ、ラベンダーが咲き誇った土地は荒廃していきました。

そんな現状を変えようと、フランス政府は1994年から再活性化計画を実施。ラベンダー生産は多少持ち直し、年間生産量は30トン弱から45トン強に推移しています。

現在のフランスにおけるラベンダー栽培地は、主にヴォクリューズ県のアルビオン高原地方、ソー地方、アプト、ドローム県のバロニー山地です。

これらの地域から産出されるラベンダーが、ラベンダー油全体の約8割を占めるとされています。フランスから、ヨーロッパ~世界各国に、今も多くのラベンダー製品が届けられているのです。

6章 近現代の日本 ~中心は北海道~

この章では、日本におけるラベンダーの歴史をご紹介します。

6-1、医学書がラベンダーと日本の接点

日本がラベンダーの存在を知ったのは、西洋の医学文献からでした。ヨーロッパでは医療にラベンダーが使用されていたため、西洋医学が日本に入ると共に、ラベンダーの存在も知られることとなったのです。

1819年にはオランダからラベンダーの花と精油が輸入され、1860年には、遣米使節団によって種子がもたらされました。

様々な文献からも、幕末の頃には一部精油が用いられ、ラベンダーの栽培もされていたことが推測されています。

6-2、本格的なラベンダー栽培

日本におけるラベンダー栽培は北海道が原点といえるでしょう。
1937年(昭和1年)、曽田香料株式会社がフランスのアントワン・ヴィアル社からラベンダーの種を入手した事が始まりとされています。

千葉・岡山・北海道の各農事試験場と曽田香料札幌工場で試験栽培を行い、北海道の地がラベンダー栽培に適していることをつきとめました。その後、札幌市の南沢と岩内郡発足村(共和町)で栽培、蒸留が開始されたのです。

第二次世界大戦が勃発すると、食糧増産の為にラベンダー栽培は一時期ストップしてしまいました。

一方、曽田香料はラベンダー栽培を放棄したわけではありません。戦時中もラベンダーの原種苗を保存。終戦後は契約による委託栽培を募り、富良野地方などでラベンダーの栽培・蒸留が盛んに行われるようになったのです。

しかし、盛り上がりもつかの間。合成香料技術の進歩により、1972年(昭和47年)頃からトーンダウンを始めます。

そんな時代の中で転機が訪れます。ドラマ「北の国から」(1981年 – 1982年)の大ヒットです。雄大な北海道のラベンダー畑に惹きつけられた人々が観光に訪れるようになります。ラベンダーは観光資源として再び栽培されるようになりました。

現在でも富良野地区の中部にある中富良野町のラベンダー畑は、夏の北海道の風物詩として、多くの観光客を惹きつけています。

7章 ラベンダーの精油の種類と効果 ~心身にリラックスを~

香りにリラックス効果があるとされるラベンダー精油。アロマテラピーには欠かせないオイルです。精神のみならず、体にも嬉しい効果をもたらしてくれるのだとか。

正しく効果を実感する為に、まずは精油とアロマオイルの違いを見ていきましょう。アロマ向けとされる「ラベンダー・アングスティフォリア」の効果を紹介します。

7-1、精油とアロマオイルの違い

精油もアロマオイルも、匂いを楽しむために使われます。しかし、決定的な違いがあるのを知っていますか?

それは成分です。精油の場合「100%天然成分」のものにのみ「精油」の表記が許されます。従ってアロマオイルの場合は、「100%天然でないもの、天然成分に合成香料が加えられたもの」と解釈することができるのです。

精油の場合、芳香剤としてはもちろん、お風呂に入れてアロマバスにしたり、マッサージオイルとしても使用する事が可能です。ですが、アロマオイルの場合は芳香剤以外の使用はおすすめできません。

使用した場合、肌荒れの原因になりかねないともいわれています。

「バスタイムや、マッサージの際に香りを楽しみたい」という方は、「精油」であるかどうか、しっかり確認しましょう。

7-2、種類

ラベンダーにも品種があるように、ラベンダーオイルにも種類があります。
ラベンダーオイルごとの特徴を見ていきましょう。

ラベンダー・アングスティフォリア

ラベンダー精油の中でも一番安全で、使いやすい、最もポピュラーな精油。一般にラベンダー精油といえば、ラベンダー・アングスティフォリアを指します。
睡眠を促進する作用も期待されています。

ラベンダー・ストエカス

別名フレンチラベンダー。一般的に知られているラベンダーの香りとは異なり、リラクゼーション向けではないです。この精油には「ケトン」という成分が含まれています。

ケトンには、脂肪を溶かす・胆汁分泌促進と言った効果が見込める為、痩身マッサージ目的で、エステサロンで使用される事もあります。問題は「神経に対して毒性を持つ」という点です。プロ向けの精油で、取扱には注意が必要とされています。

ラベンダー・スピカ

スパイクラベンダーとも呼ばれます。ラベンダー・ストエカス程ではないものの、「ケトン」を含んでいます。虫さされや緊急の火傷の手当など、医療目的で使用される事が多いです。香りもアロマ向けではありません。

7-3、効果

ラベンダーの精油効果は、心、体、皮膚と多岐にわたります。

心への効果

感情のバランスを整え、リラックスへと導いてくれます。溜まった感情を解き放つ働きもします。行き場のなくなった感情の解消に役立てる事が可能です。

「人目が気になって、いつも自分の感情を抑えてしまう。言いたい事が言えない」など、心に溜まった感情を香りで浄化してみましょう。

体への効果

体への効果は150種以上に及ぶとされています。特に患部を冷やす効果が期待され、同時に緊張を解く効果が注目されています。

緩和が期待されている主な症状を紹介しましょう。

  • 高血圧
  • 動悸
  • 頭痛
  • イライラの緩和
  • 生理痛の緩和
  • 皮膚炎
  • 乾癬
  • 湿疹
  • ニキビ

その他、抗感染作用にも優れ、泌尿器・生殖器系・呼吸器系の感染症に効果的といわれています。

8章 最後に

ラベンダーと人の関わりの歴史について紹介しました。参考になりましたか?
古くから薬替わりにも使われ、人々とラベンダーには切っても切り離せないほど長い歴史があります。

ラベンダーの人体に及ぼす効果は100以上とされ、様々な場面で古来より今に至るまで使用されています。玄関にラベンダーを飾れば虫よけに。見て、嗅いでラベンダーを楽しむ事も出来ます。ドライフラワーにし易いという点も嬉しいポイントです。

ラベンダーの癒し効果から、治療効果まで、生活に上手に取り入れていきたいですね。

提供・はな物語

こちらの記事は、プリザーブドフラワー専門店・はな物語の提供でお送りしました。

記事の内容は参考になりましたか?
ラベンダーの歴史を調べる一助になれば幸いです。

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